日本独自のルアーフィッシングとして、アジングを中心に繊細で奥深い世界を確立したライトゲーム。それをリードする「宵姫」ブランドから、2021年も魅惑的なニューカマーが続々と登場する。その魅力と戦闘力は、はたしていかなるものか。ラグゼプロスタッフにしてアジングの巨匠・藤原真一郎に語ってもらおう。

「この実力は間違いなくホンモノ」
藤原が見た「宵姫／爽」のクラスを超えたパフォーマンス

「宵姫」のDNAを継承した最新基準の「扱いやすさ」

「そもそも宵姫シリーズのエントリーモデルの位置づけとしてスタートした企画です。この企画の話があったとき、コンセプト、細かな仕様についての打ち合わせをへて、プロトの改良を重ねポテシャルの上乗せがされてきました。全機種、想像以上の仕上がりに驚いています」と藤原はいう。
ラグゼ宵姫ブランドの新しいシリーズ「爽」は、こうしてリリースされるにいたった。「シリーズのコンセプトは、ひとことで言えば徹底的な“使いやすさ”の追求です。たとえばジグ単系のモデルは、入門者でも１ｇ前後のリグを投げやすく、しかもちゃんとラインに掛かる荷重の変化によるアタリがわかる。しかも掛けた魚をバラしにくい設計です」。
そんなこだわりが見て取れるのは、この価格帯では異例ともいうべき、オールチタンフレームのSiC-Sガイドの採用だ。これは、ライトゲームで最も重要な、ラインに掛かる微妙な荷重の変化を感じ取るための“軽さ”を追求した象徴ともいえる。
「ちょっと前に、53と58のFLを使ってTVのロケで、島田細香さんとアジングをやったんだけど、手に馴染みやすく使いやすい。基本性能のポテンシャルも高いので、当日は、かなり難しい状況だったけど島田さんにもしっかりアジを獲ってもらえましたからね」。

シングルハンドキャストが決まる！

「サム・オン・トップ」（親指をグリップに添える握り方）で正しく握れば、１ｇ前後の軽量リグも気持ちよくシングルハンドキャストが決まり繊細な操作もストレスはない。「宵姫／爽」シリーズの使いやすさを実感できる瞬間だ

タフな状況下での高い基本性能の裏付け

「フィッシングライフ」のロケでは、ジグ単モデルの53＆58FLソリッドが活躍。かなり難しい状況だったが、連発した藤原のアプローチを島田細香も再現してしっかりアジをキャッチした

このクラスでチタンフレームガイドを採用

ベーシックモデルながら、全モデルチタンフレームで同サイズでは従来SiCリングより口径の広いSiC-Sリングガイドを採用。「ガイドの糸抜け」にもこだわったセッティングで、ライトゲームに必要な「感度」の実現にも貢献する装備

万全の配備を実現した全5機種の使い分け

「爽のシリーズが、ここまでのロッドに仕上がったのも、宵姫シリーズの蓄積があったからこそでしょう。特に華からのフィードバックは大きかったですね」と藤原はいう。
これが良く見て取れるのは、グリップ周りのパーツである。軽くブランクの感度を損なわず、しかも使い続けて疲れない太さや形状や素材でほぼ共通のデザインになっている。
「“シンプルで軽い“華”のような作り”というリクエストに開発部隊ががんばって対応してくれて急速に完成度が上がりましたね。軽くてガイドの糸抜けも抜群。凄くお買い得なモデルになりましたね（笑）」。
ラインナップは、全5機種で、前期のようにアンダー１ｇと軽いリグを多用するなら53と58のFLクラス。これだけでなく、他のモデルもしっかりとしたコンセプトで設計されているのがうれしい。
「53と58は、足場の低い波止場や岸壁、漁港内のように、人がアジに肉薄できるようなポイントがいいでしょうね。これに対して63のULは漁港の外向きや水深、潮流が絡むポイントなどで1.5g前後を多用する場合やメバル狙いにも最適です」。
LとMのパワークラスで配備された2本の7ft級モデルの使いどころは。
「73のLは、小型ジグの使用も視野に入れたモデルで、大型メバルやカサゴ、小型の回遊魚やアコウ（キジハタ）なんかとも楽しく遊べるモデルです。３～５ｇのキャロやスプリットショットとの相性がいいですよ。78のMは、16ｇまで行けるので大遠投したいフロートやジグで使えます。シャローの絡んだ小磯やゴロタ、サーフ沖の浅いレンジをフロートで探るのに最適です。中級者にも＋αの一本としておすすめですよ」とか。
このように「宵姫／爽」シリーズは、ライトゲームを志向するあらゆるアングラーにとって、ゲームの悦びをさらに加速する、最高の相棒になってくれるのである。

FLが活躍する漁港のアジング

１ｇ以下のジグヘッドも多用する港内のゲーム。常夜灯下で繊細に誘って掛けにいく釣りでは53。港外も視野に入れるなら58のFLクラスが活躍してくれる

ＵＬからＭはバーサタイルモデル

壱岐でのロケには、63UL、73L、78Mを持ち込んでアジはもちろんシーバス、カサゴ、スマガツオ、ヒラメなど様々なターゲットを楽しんだ。シリーズ共通の綺麗なベンドカーブにより、想定以上にサイズの魚が掛かっても余裕を持って対処できる。特にULはバーサタイルながら、FLより負荷のかかる場面で頼りになるジグ単ロッド、という美味しい位置づけになっている

アジングファン唸らせる藤原真一郎の自信作
宵姫／AJカスタム＆トレモロAJ2.6inのレゾンデートル

泉南エリアではグッドサイズを連発

「宵姫／AJカスタム」の浮き上がりにくい特性はナイトゲームでも抜群だ。激戦地・泉南エリアでの撮影でもグッドサイズを連発した

アジングにこだわりぬいたAJカスタムの戦闘力

「ラウンドでもコブラでもできない、アジに特化した控え目なダートとレンジキープ力がAJカスタムの持ち味です」。
アジングでダート系のヘッドというとデイゲームでのリアクション的な使い方を連想するが、藤原が注目したのがレンジを外さずに起こる控え目なダートの有効性だ。 それは、デイゲームはもちろんナイトゲームでも抜群に効く「スパイス」となる。 「アジという魚は、プランクトンや微細なベイトにとっては捕食者ですけど、より大きな魚にとってはベイトフィッシュなんです。だから、デイゲームで釣るとよくわかりますけど、大きなダートが起こす強い水押しを嫌うケースが多いんですよ」という。
同時に、宵姫／ラウンドにせよコブラにせよ、ロッドアクションを加えると基本的には上に向かって動く。シビアな時には、この特性がレンジを外すのか、（あるいはリグを見失しなうのか）反応が悪くなるという。 「それに、浮き上がりにくい特性があるので、ダートだけではなく、超スローに潮になじませるような使い方でも、いい仕事をしてくれます。浮き上がりやすいコブラ、スタンダードなラウンドと使い分けてもいいし、ウェイトも0.2ｇ刻みと、これまでよりも細かいので、AJカスタムだけでゲームを組み立てるのも悪くないですよ」。
アユバリからフィードバックされた、独特の形状をもつフックも秀逸で、ラウンドやコブラよりも太軸だが、抜群の貫通力がある。 「これはヘッドから離れた位置にあるラインアイとわずかに内側を向いたポイントの向きが完全に一致していることに加えて、貫通性が大幅にアップした“ナノアルファ”というコーティングのおかげです。フックのサイズは＃４ですけど、太軸でたわみがないから素早く貫通しギガクラスの大アジはもちろん豆アジもしっかり掛けられますよ」。
太軸フックのおかげで、刺したワームもズレにくいから、ショートバイトからのフォローも効く。両サイドはフラットなので、持ちやすいから手返しもアップ。 くわえてヘッドにはウェイトが刻印されているので、重さを使い分ける時にも非常に便利だ。高感度タックルを駆使するエキスパートこそ使ってほしい、その名に恥じない自信作なのである。

「スパイス」となる控え目なダート

レンジを大きく外さない「小さくもクイックでキレのあるダート」はナイトゲームでも強力な武器になる。泉南のロケでは、0.6ｇのダートからカーブフォールがパターンだった

このヘッド形状がもたらす特性

「クイックショートダート」に加えて浮き上がりにくい特性から、従来よりも軽いヘッドでレンジを落とすことができる。しかもウェイトの設定は0.2g刻み。吐き出しにくいワイドギャップでショートシャンクの独特のフック＋ハイポイントアイにより、フッキング性能は驚異的。使いこなせば、アジングの世界観が大きく変わるといっても過言ではない

2.6inのサイズと新形状が戦略を大きく広げる
『宵姫／トレモロAJ2.6インチ』が持つ釣獲力の秘密

長くてもフッキングは悪くない

リブは大きいがボディ本体は細く、「Q.S.Sシステム」の効果とも相まってフッキングは２インチのトレモロと遜色はない。大アジ狙いはもちろん通常のアジングでも「宵姫／トレモロAJ2.6インチ」は大きな武器になる

同じ名前でもワーム特性が大きく違う

上が「宵姫／トレモロAJ2インチ」で下が新作の「宵姫／トレモロAJ2.6インチ」。サイズ以外にリブの形状とテールが違うので、名前は同じだがワームの特性＝水押しは大きく違うのだ。2インチが全14色8本入り、2.6インチは全9色8本入りとなる

たんなるサイズアップではない
専用設計が秘めたコンセプト

「トレモロAJ2インチが長くなったから、一見すると大アジ用と思いましたか？　もちろんそれもあるけど、このワームの持ち味は、それだけじゃないんですよ」と藤原はいう。
見落としがちだが、よく見るとこのワームは、「ストレート系のピンテール」であるトレモロAJ2インチとは形状がかなり違うのだ。 「長さだけじゃなく、リブやテールの形が違うんですよ。テールは完全なフラットテールで、リブはリング状になっています。存在感とボリュームから、確かに大アジにも有効です。けれども一番の目的は、リブがしっかり水をつかんでくれるから、このワームじゃないとできない、“じわ～”と動かす超スローな使い方ができることです。テンションフォールでは水平姿勢をキープ。フリーフォールや強く動かせば、フラットテールが強くパタパタ動きます。操作によって視覚的アピールを高めることも出来るんですよ」。
しかも一見ボリュームがあるけれど、リブ以外の本体は細いので、「Q.S.S」との相乗効果で、20㎝前後のアジでも、フッキングが悪くなることはないそうだ。 「AJカスタムとの相性は抜群です。フロートやキャロの分離リグと組み合わせても、リブとテールの効果で、流すだけでも充分なアピールにしてくれます。じつは使いどころは凄く広いワームなんですよ」という。
『宵姫／トレモロAJ2.6インチ』で通した、今回の取材でも、藤原は『宵姫／AJカスタム』とのコンビで、激戦区の大阪湾の泉南から、外洋の離島である壱岐まで、アジはもちろん様々なターゲットを仕留めている。 「トレモロAJの2インチを基準に、波動を弱くするならノレソレ1.8インチ、少しアピールを上げるならトレモロAJの2.6インチ、さらにアピールを強めるならアーミーシャッド1.8インチとワームの波動にメリハリ付けてより細かくローテできるのもいいですよ」。
あなたのアジングをもっと広く深く進化させる。このニューカマーは要チェックだ。

AJカスタムとの相性も最高

動かして使えばフラットテールが強く水を押しデイゲームでも丸のみ。壱岐のロケではAJカスタムとのコンビでこんなシーンを連発した

分離リグで使っても面白い

長い＝超スローに使ってもしっかりアピールできるから、フロートやスプリットショットなどの分離リグで使っても大活躍。ワームのローテを拡大してくれる待望の新兵器になるのだ

「究極」を追求するアジングマニアに捧げる
M40Xが可能にした極先調子「宵姫天S52UL-solid」という前衛

さらなら高みを目指す先鋭的なモデル

超エクストラファーストテーパーのハイレスポンスな設定は、これまでの天シリーズとも一線を画した先鋭的モデルなのだ

超ハイレスポンス！極短にして極細ティップ

ジグ単特化モデル「宵姫天」シリーズにブランクス全層のメインマテリアルに「トレカ®M40X」を使ったNEWモデル「宵姫天S52UL-solid」が追加される。 「じつは尖って見えるけど、これまでの天シリーズは、テーパー自体は使いやすいレギュラーファーストなので、けっこう普通の優等生的なアクションなんですよ。ただ、ブランク自体が高弾性なので、軽くて感度がずば抜けていました。今度の52ULソリッドは、その上をいく素材を使って、アジングロッドにおける操作性と感度の限界を追求してみました」。
制作サイドのK氏によれば、「トレカ®M40X」は従来同弾性率マテリアルと比べ強度面が向上した素材。よってブランクをより軽く作ることが可能になるから、感度と操作性が飛躍的に向上するのだという。 「今回は、この素材を活かすためにレスポンスに特化したピーキーな設定にしました。先端のソリッドはほんの僅か入ってくれればいいと割り切って柔軟なノーマルタイプソリッドを急テーパーかつ短く設定。先径も0.55㎜まで削り込んでいます。かなり特殊なソリッドを搭載した“変態調子”のロッドです。（笑）」とK氏。
この設計とブランクの特性により、静と動のメリハリは極限まで研ぎ澄まされ、藤原いわく特に反響的感度による水中情報の解像度がこれまで以上に上がったという。 「感度という点においては、もはや異次元です。正直、宵姫天シリーズの追加モデルに入れてしまうというのに違和感を覚えてしまうレベル。なにせテスト中は天とは別の上位機種になるんじゃないかと思っていたくらいです。従来の天も指でつまむくらいの感度はあった。ただ、この宵姫天S52UL-solidは、爪先でつまむというか、爪の先に針をつけて、その針先でつまむくらいの感度です。アジが吸い込んだ瞬間を察知して、食わせながら掛けれる特殊能力もそうですし、0.1gのジグヘッドの重さの違いを感じ取って使い分けることも可能。もし、誰かと競い、1匹でも多く釣るといった競技会では絶対に手放せない。アジングを極めたい、上達したいという人には、現存するアジングロッドの中で究極の1本はこれだと自信を持って推奨できますね」と藤原はいう。
まさに前衛にして頂点。このロッドは、感度と操作性を追求するアングラーに向けた、藤原真一郎からの新しいアジングへ誘う招待状なのだ。

極短にして極細のソリッドセクション

ソリッド先径は限界まで削り込んだ0.55mm、150mmのショート設定。「ティップは、アジが吸いこんだ分だけ入ればいい」という感覚で設計されている。

圧倒的な感度で「水中情報」を捉える

特に反響的感度による水中情報の解像度がこれまで以上に上がっている。現行天シリーズとは味付けの異なった感度性能を発揮するモデルだ。

シリーズ共通のハイレベルな装備

無駄を極限までそぎ落とした独特のシングルハンド仕様の「リザウンドグリップ」やチタンフレームのトルザイトリングガイド（トップガイドのみSiC-Sリング）はシリーズ共通。グリップエンドを保護するためのEVA製「エンドカバー」も標準装備

ライトゲームの「極み」を求めて

驚くほど繊細で奥深いパターンの多様性。アジングの魅力は、まさにそこにつきる。2021年も「宵姫」ブランドは、このゲームの「極み」を求めて、さらなる進化を続けていくのである

厳寒期にはうれしいNEWアイテム
『宵姫スリットスナップ』

厳寒期のナイトゲームで、ジグヘッドの重さを変えるときに極細のリーダーをジグヘッドのアイに通すのは、アジングでは大きな悩みの種。それを解決するのがこの接続具。上（小さい方）のスリットにリーダーをひっかければ挿入完了。これに結べば、ローテのたびにリーダーが短くならないし、ジグヘッドの装着も下（大きいほう）のスリットに挟むだけ。ジグヘッドの自由度も上がるし軽量だから中小アジの食い込みにも支障はない。常夜灯下の数釣りパターンにはおすすめだ

＜DATA＞
SS＝重量:0.01g／強度:2.5㎏f（5.5lb）／適正ライン:フロロ1号（4lb）まで
S＝重量:0.03g／強度:3.8㎏f（8.3lb）／適正ライン:フロロ1.5号（6lb）まで